距離感
自邸のLDKには段差がついています。
段差なんてバリアフリーが求められる時代と逆行しているという感じもしますが、得られるものの方が大きいと判断しました。
図面では分からないし、説明しだすといつ説明が終わるのか分からないくらいなので、説明することもあまりないのですが、資料を作成する機会があった為、ちょっと記事にしてみます。
※長くて飽きたらごめんなさい。。
いつも建築の始まりは敷地の中で一番良い場を探します。
将来的なことも色々と想定しながら、敷地の様々な場所に立ち、そこから見える景色、そこで感じる環境をどうやって活かすかを考えます。
今回は、住宅地の中で隣地が空き地でした。
現在は空き地でも将来的に住宅が建つことを想定し、最も良い場を探したときに見つけたのが一番道路側の場でした。
(道路側にリビングを計画すれば、道路の伸びる方向はずっと視線が抜けるという環境です)
しかし、要求事項で駐車スペース3台という条件があった為、道路側にリビングを持ってくると駐車スペースが取れないという問題が発生しました。
そこで、リビングを上げてしまい、リビングの下に駐車スペースを確保してはどうかという発想に行き着きました。
リビングを高くすることで、将来的な採光と通風も確保することが出来ます。
その瞬間にリビングに設けたバルコニーの下を通り玄関にアプローチしていく光景が浮かび、そこからリビングまで引き込んでいくようなイメージが頭の中で完成しました。
ちなみに、最初に頭の中に思い浮かべた光景と完成したアプローチは全く一緒です。
※樹木が未だに植えられていませんが、ちょっと狭いところを通ってアプローチするイメージです。
リビングが高くなることで、玄関を高くしていますが、実は道路と高低差があり、近隣の住宅も同じくらい玄関が高くなっています。
みんなには段差、段差と言われますが。。。
そして内部空間ですが、2階建ての計画とすることが前提条件としてあった為、必然的にリビングは吹抜けとなります。
しかし、住宅地ということもあり、外部の景観はさして良いと言えない状況の中、吹抜けという開放的な空間を設けてしまうと外部と内部のバランスが取れないと考えました。
(内部空間が充実しすぎて、外部への意識がなくなってしまうのではないかと考えました。)
そこで、リビングの環境はあくまで高天井という環境とし、開口部も絞ることにしました。
メインの開口は二つ。
一つは安定した光を得るための北側の上部に設けた大きな開口。
もう一つは外部の環境を取り入れる為の高さを抑えた横長の開口。
サブとして、空への視線を抜くための開口と自然光に色をつけるトップライト。
明るく開放的な空間ですが、壁面を多く残すことで落ち着いた環境も両立しています。
ちなみにリビングの高天井を、サッシを多用した吹抜けと同じように開放的に感じるように、リビング手前の通路(ダイニング部分)は開口部をあまり設けずに暗く低く計画しました。
リビングに辿り着くまでの環境をリビングと対照的な空間とすることで、明るく開放的な感覚を強調した感じです。
適度に壁面が残ったリビングには窓際やテレビ台のところにくぼみをつけて、自然と座りたくなるような設えとしています。
また、リビングのバルコニーにはアプローチ部分に植えた樹木が伸びてきて、自然と外に目線を誘導し、そこは敷地内で見つけた道路側に視線が抜ける一番良い場となっています。
リビングに行くまでに設けた段差も室内空間に活かすために色々と検討をしています。
ダイニングテーブルをキッチンに隣接して造作とすることで、段差を利用して掘りごたつのように座ることが出来ます。
また、キッチンとリビング、ダイニングの床高さを変えることで、各々の場で過ごす家族の目線を揃えることが出来ます。
目線が揃うことで、距離は離れても意識的な距離が縮むように考えています。
まとめると、「段差で生まれた適度な距離感」ってとこです。
特に小さな子供とキッチンで料理をする大人の目線が近くなることで、本来であれば「見守る側」と「見守られる側」という立場になるところを、お互いにコミュニケーションをとることができる距離感に整えることが出来ました。
子供が料理している手元を楽しそうに見ながら、料理をしている妻に話かけているところを見て、段差による不便さよりも段差によって得られたものが大きかったと感じています。
(キッチンの物でイタズラをしてしまうというデメリットはありますが。。。)
紹介したいことはまだまだあるのですが、これ以上書くと読むのも大変になってしまうと思うので、この辺にしときます。
(どの場所も考え抜いて計画していて、説明が止まらなくなりそうなので、興味がある人がいたらまた続きを書きます。)
そんなこんなで、改めて見るとよく出来たなと思っています。
そして、次に設計する機会があれば、もっと良いもの作ろうと思ってます。
設計してると、考えすぎて疲労感がすごいことになりますが、楽しいので良しとします!
(自邸を設計してる時は、考えすぎていつも頭痛かったな。。。)
take